介護はある日突然訪れます。親や家族に介護が必要になったとき、どこの誰に、どんな風に相談すれば良いのでしょうか?
ケアマネ? 施設? 訪問介護?
介護サービスを利用したことがない方にとって、どこの窓口から入ってそのような支援に繋がるのか、実際よくわからない、という方が意外と多いのではないでしょうか。
そもそも介護保険制度というのは、それらの仕組みがなかなか複雑です。
サービスの種類や費用、実際に支援を受けるまでのプロセスを、一朝一夕で知り尽くすのは至難の技です。
本記事では、まずは自身のご家族の介護に関して、どこの誰に、どのように相談すれば良いかをまとめましたので、参考にしてみてください。
相談の種類
まずは相談内容を整理し、知りたいことを明確にしておきましょう。
【相談の例】
- 介護サービスを受けるための手順を知りたい(申請したい)
- 親(や家族)が介護に該当するか知りたい
- 経済的な不安があるが、利用可能な介護サービスがあるのかを知りたい
- 様々な選択肢の中で、自身の家族に最適な支援がわからない
- 遠方の親に、自分で手続きしてもらいたいが、誰か手伝ってくれる人はいないか
- 家族と自分とで意見が違うが、何かアドバイスをもらいたい
- 介護が必要な家族と仲が悪く話し合いができない
- ネットで調べた情報だけではわからないことがある
相談内容に応じた適切な窓口を案内できるように、各相談窓口で連携している事が多いです。
しかし知るべき内容を自身で把握していなければ、窓口の担当者からも中途半端な対応をされかねません。
そうならないために、まずは問題を一旦整理してみましょう。
そして決して自分一人で抱え込まずに、電話などで近隣の相談窓口に連絡してみましょう。
高齢者の介護に対する相談窓口
公的な介護サービスを受けるためには、まずお住まいの地域の市町村役場にある「介護保険課」や「地域包括支援センター」がその窓口となっている場合が多いです。これらの機関では、介護サービスに関する情報提供や、必要な手続きの支援、介護保険の利用方法についての相談を受け付けています。
自治体の窓口
自治体の窓口は相談者ではなく、介護が必要な方が住まわれている自治体(市町村)の窓口を指します。
介護保険課では、以下のような多様な相談に答えてくれます。
介護保険の制度や手続きに関する相談
- 介護保険の利用条件
- 必要な手続きの方法
- 加入に関する質問
サービス内容に関する相談
- 在宅介護サービス
- 通所介護サービス
- 短期入所サービス
- 介護予防サービス
サービスの利用方法に関する相談
- サービスの申請方法
- 各種サービスプランの立案
- サービス提供事業者の選び方
費用に関する相談
- 自己負担額
- サービス利用にかかる費用
- 介護保険の給付内容
その他
- 認定申請に必要な書類の準備
- 介護サービス提供事業者とのトラブル時の相談
- 介護を必要とする人の権利擁護
これらの相談に基づいて、適切なアドバイスや支援が提供されます。
市町村の役所には「高齢福祉」に関する相談窓口が必ずあるため、住んでいる自治体(住んでいる市町村)の代表番号に掛ければ、適切な窓口(名称は自治体により異なる)に繋いでもらえます。
「高齢者みまもり相談室」や「高齢者福祉課」「健康相談窓口」といったように、複数の相談窓口を設置している自治体も多くあります。
地域包括支援センター
高齢化社会が進行する中で、地域社会における高齢者の生活質の維持と向上は、急務となっています。その中心的役割を担うのが「地域包括支援センター」です。この記事では、地域包括支援センターの役割とその重要性について掘り下げていきます。
地域包括支援センターとは?
地域包括支援センターは、2006年の介護保険法の改正により設立された、高齢者の「居宅介護」や「生活全般の支援」を目的とした施設です。これらのセンターは、自治体によって設置され、それぞれの地域の実情に合わせたきめ細やかなサービスを提供しています。
市町村などの各自治体が直接運営、あるいは委託して設置されている高齢者向けの「総合相談窓口」。
中学の学区ごとに1ヵ所を目安に、全国で5,000ヵ所以上設置されています。(自治体によっては「高齢者○○センター」などと呼称が違う場合があります)
その約8割は、自治体の直接運営ではなく委託型で、委託先は社会福祉法人、医療法人、民間企業などとなっています。
地域包括支援センターには、主任ケアマネージャー、社会福祉士、保健師(看護師)等のプロが配置されていて、高齢者が気軽に相談できる窓口となっています。
ただし直接的な介護サービスを行っているわけではなく、近隣の介護事業所と連携していて、その橋渡し役を担ってくれます。
そして要支援1あるいは2と認定を受けた方(または非該当でも介護予防が必要な方)は、地域包括支援センターが介護予防計画を作成します。
また、まだ介護が必要ではない方も、虐待や金銭トラブルから高齢者の権利を守る権利擁護、暮らしに関する様々な相談を受け付けています。
主な役割
地域包括支援センターの役割は多岐にわたりますが、主に以下のような機能を担います。
- 総合相談支援:高齢者やその家族からの健康、福祉、介護に関する相談に応じる。
- 介護予防:高齢者が自立した日常生活を送れるよう、介護予防プログラムを提供する。
- 介護プランの作成:ケアマネージャーが介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、必要なサービスの調整を行う。
- 継続的な見守り:高齢者の生活状況を把握し、必要に応じて適切な機関につなげる。
- 地域資源の活用:地域の福祉資源を組織し、効率的なサービスの提供を目指す。
- 専門職の育成と協力体制の構築:医療・福祉・介護専門職間での情報共有と協働を促進する。
介護予防と地域づくり
介護予防は地域包括支援センターの重要な使命の一つです。高齢者がいつまでも健康でいられるように、運動教室や健康講座、栄養指導などのプログラムを提供します。また、地域の人々が支え合うコミュニティづくりにも力を入れており、見守り活動や地域イベントの企画なども積極的に行います。
ケアマネジメントの役割
ケアマネージャーは、高齢者一人ひとりに対するケアプランの作成だけでなく、日常生活全般にわたる支援を行います。これにより、介護が必要になっても、なるべくその人らしい生活を続けることができるようサポートしています。
地域社会との連携
地域包括支援センターは、医療機関や福祉施設はもちろんのこと、ボランティア団体や地域住民とも密接に連携しています。地域全体で高齢者を支えるネットワークを形成し、一人ひとりが安心して暮らせる環境作りを目指しています。
社会福祉協議会
社会福祉協議会(社協)は社会福祉法に基づき、位置づけられている非営利団体(民間団体)です。全国の都道府県及び市町村(自治体)に設置されています。
社会福祉協議会は、日本における地域社会福祉の推進の役割を担い、地域の福祉の向上を目的として多岐にわたる役割を果たしています。
総合相談支援
さまざまな悩みや問題を抱える個人や家族に対して、相談を受け付け、必要に応じて適切な専門機関への紹介やアドバイスを提供します。
ボランティア活動の推進
地域におけるボランティア活動を促進し、支援するための計画を立て、運営するとともに、ボランティアの育成やマッチングを行います。
地域福祉活動の計画・推進
地域福祉計画の策定や、地域福祉活動の推進を行い、住民の福祉向上を図ります。
社会福祉施策の実施
子ども食堂の運営、高齢者や障害者のためのサービスの提供、災害時の支援活動など、様々な社会福祉施策を実施します。
地域支援システムの構築
地域の資源を活用し、住民主体の支援システムを構築します。これには、見守り活動や地域の交流促進などが含まれます。
福祉資源の開発
地域の福祉資源の発掘と活用を促進します。これには、寄付金の募集や福祉資源の開発などが含まれます。
情報提供・啓発活動
福祉に関する情報を提供し、福祉意識の啓発活動を行います。
福祉の専門家としての支援
介護保険制度下でのケアマネージャーの育成や支援、地域包括支援センターの業務の一部を担うなど、専門的な支援を行います。
以上のように、社協は福祉サービスの提供だけでなく、地域の福祉の向上に向けた様々な活動を通じて、地域社会のニーズに応える役割を果たしています。
居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所は、日本の介護保険制度の下で、在宅で介護を必要とする高齢者やその家族に対して、必要な介護サービスを適切に受けられるように支援する役割を果たします。具体的な役割は以下の通りです。
ケアプランの作成
ケアマネージャーが要介護者の心身の状況、生活環境を評価し、利用者本人や家族と相談の上で、個別のケアプラン(介護サービス計画)を作成します。この計画には日常生活で必要な各種の介護サービスが含まれます。
サービスの調整
ケアプランに基づき、訪問介護、デイサービス、ショートステイなどの介護サービス提供事業者と連携を取り、サービスがスムーズに提供されるよう調整します。
相談支援
高齢者や家族からの介護に関する相談に応じ、適切なアドバイスや情報提供を行います。
継続的なモニタリング
サービスの提供が開始された後も定期的に訪問し、利用者の状態の変化に応じてケアプランを見直し、サービスを最適化します。
関連機関との連携
地域包括支援センター、医療機関、行政など、関連する他の機関と連携して、利用者の総合的な支援を図ります。
居宅介護支援事業所は、利用者一人ひとりのニーズに合ったサービスが提供されるよう、中心的な役割を果たし、介護サービスが効率的かつ効果的に利用されるようにサポートしています。
かかりつけ医療機関の医療相談室
かかりつけ医療機関の医療相談室(または患者支援センター、ヘルスケアコンサルテーションセンターなどと呼ばれることもある)は、患者やその家族が医療に関するさまざまな相談を行える場所です。ここでは、病気の治療に関する相談はもちろん、病院のサービスや医療制度、介護に関する情報提供、精神的なサポート、さらには患者の社会復帰を支援するためのアドバイスなど、幅広い支援を提供しています。
医療情報の提供: 病状、治療法、医療機関の利用方法、医療費の支払い方法などに関する情報提供。
サポート体制の説明: 治療に伴うサポートプログラムやセカンドオピニオンの紹介。
患者・家族の相談対応: 病気や治療に関する患者や家族の不安や疑問に答える。
ケアプランの相談: 退院後のケアプランや在宅ケア、介護サービスに関する相談。
各種手続きの支援: 医療保険の手続きや各種書類の準備支援。
連携支援: 地域の保健、医療、福祉サービスとの連携をサポート。
このような医療相談室は、患者が自身の健康に関する意思決定を行う上で重要な役割を果たします。
地域の民生委員
民生委員は日本独特の社会福祉制度の中で非常に重要な役割を果たしています。民生委員・児童委員は、民間のボランティアとして地域社会での福祉活動を行い、住民の福祉の向上に努めます。
地域住民からの相談を受け、必要に応じて適切な支援やサービスへの橋渡しを行います。これには高齢者や障害者、児童福祉、生活困難者などの幅広い相談が含まれます。
訪問介護事業所
訪問介護事業所に直接相談することも可能です。訪問介護事業所は、主に訪問介護サービスを提供する民間企業が主で、日常生活の援助や身体介護などを行うホームヘルパーが所属しています。
介護サービスに関して具体的なニーズがあり、それが訪問介護サービスに限定される場合、直接訪問介護事業所に相談することでサービス内容の詳細や利用の可否、さらには利用開始の手続きなどについて迅速に情報を得ることができるでしょう。
ただし、訪問介護サービスを利用するためには、まずは要介護または要支援の認定を受ける必要があり、これには前述した介護保険課や地域包括支援センターでの手続きが必要です。また、ケアプランに基づくサービスの手配は、ケアマネージャーを介して行うのが一般的です。
要は、すでに認定を受けており、ケアプランがある場合には、そのプランに従って訪問介護が必要なら、直接訪問介護事業所に相談してサービスの手配を進めることは効率的です。しかし、初めての申請や認定がまだの場合、または包括的な介護サービスが必要な場合には、介護保険課や地域包括支援センター、居宅介護支援事業所を利用するのが適しています。
公的な介護サービスが受けられるようになるまでのプロセス
介護サービスを実際に受けられるまでのプロセスを簡単に解説しておきます。
初回の相談や申請:介護保険課や地域包括支援センターでの相談後、介護サービスを利用するための申請を行います。
※申請に必要なもの
- 介護保険の保険証
- 所定の申請書
- 主治医意見書
- 個人番号(マイナンバー)
- 本人確認ができるもの
第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の方は、加入している医療保険の保険証が必要です。
要介護認定の申請:介護サービスを受けるために、要介護または要支援の認定を受ける必要があります。この認定を受けるための申請後、訪問調査や審査が行われます。
認定結果の通知:申請から約1ヶ月以内に認定結果が通知されます。この期間は自治体によって前後することがあります。
ケアプランの作成:認定を受けた後、ケアマネージャーが利用者のニーズに応じたケアプランを作成します。
サービスの開始:ケアプランに基づいて、介護サービスの提供を開始します。
以上の手続きには、認定の申請からサービス開始まで数週間から1ヶ月程度を要することが一般的です。ただし、地域による混雑状況やケアプランの作成、サービス提供事業者の選定などによって、期間は前後することがあります。また、緊急を要する場合などは、これより早くサービスを受けられることもあります。
まとめ
介護サービスを受けたい方だけではなく、介護サービスを受けるのに相当するのかどうか、経済的な不安や、家族間での意見の相違など、悩んでいる内容は人それぞれだと思います。
しかし、まずはどちらの相談先でも構わないので、問題を明確化するためにも一歩を踏み出してみましょう。
満足のいく結果が得られるかどうかはわかりませんが、自分で抱え込まずに、周りを巻き込んでいくことが大切です。