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普段何気なく、あたりまえのように行っている衣服の着脱行為。「着替え」
しかし何らかの疾患、何らかの障がいがあり、そのあたりまえだった行為ができなくなります。
あるいは先天的な疾患や障がいをお持ちで、支援が必要な方がおられます。ヘルパーはそういった方々の介助をします。
衣服の着脱は利用者さんの清潔を保つだけでなく、気分をリフレッシュさせますので、手際よくキレイに衣服を整えましょう。
現場で戸惑わないよう、ここでしっかり基礎を押さえておきましょう
はじめる前に確認しておきたいこと
- 利用者さん情報の確認(自分でどこまでできるのか。個人差のある可動域や筋力の程度、痛みやしびれなど)
- 利用者さんの本日の体調確認(必要ならばバイタルチェック、声かけを行い、体調を聞き、更衣介助を行うための気持ちのスイッチを入れていただきます)
- 裸になった際には皮膚のチェックを行う
- 室内温度が着脱に適した温度であるかどうか
- 着替えの準備ができているかを確認(パジャマ、下着、外出着、靴下など。衣類に加えて、おむつや清拭用具など)
- 必要であれば更衣介助中に身体にかけるブランケット等を用意
実践
半身麻痺の介助では、基本は脱健着患(だっけんちゃっかん)です。(逆に着患脱健と呼ばれることもあります)
①脱ぐときは健康なほう=健側(けんそく)から、疾患のあるほう(麻痺側等)=患側(かんそく)へと順に脱ぎます。
②着るときは疾患のあるほう(患側)から、健康なほう(健側)へと順に着ます。
なぜ脱健着患かというと、麻痺側は可動域が狭く、動かしづらいけれど、健康な方は動かしやすいため、介助者にとっても利用者にとってもその方が負担が少なくて済むからです。
座位・立位で行う場合
患側に身体が倒れていかないように注意し、必要であれば背中など身体を支え、状況に応じて健側でベッド柵を掴んでいただく等、安全を確保しながら行っていきいましょう。
上半身の更衣介助
①両足をしっかり地面につけ、安定した姿勢をつくります。
②かぶりタイプの衣服の場合、まず背中側、腰から肩の上まで服をまくりあげます。前開きタイプの衣服は前のボタン、マジックテープなどを外して開きます。
③健側の腕から脱がせます。
④続いて患側を脱がせます。※健側を使って自分でできる方はしていただきましょう。リハビリにもなり、本人の向上心アップにつながります。
脱がせる時のコツ、着せる時のコツとして、患側の手を介助者の手で包み込んで、介助者自身の手の上を滑らせるように着脱すると、衣服が手指に引っかかることなくスムーズに着脱することができます。
健側を使ってご自身で上手にされる意思がある方には、できることを見守り、できない部分を支援するようにしましょう。
⑤かぶりタイプの場合、頭を脱がせます。目や鼻で止まらないようスルっと通過。
※かぶりタイプの場合は、健側を脱がせたあと、頭を先に脱がせてから、患側を脱がせるか、両腕を先に脱がせてから頭を抜くかは、人それぞれ、その方の生活習慣をお伺いし、やりやすい方を選んでください。
⑥新しい衣服を着用する。
脱健着患の原則に従い、患側から衣類を着せます。
シワなどを伸ばし、前開きの衣服はボタンやマジックテープを留め、かぶりタイプは頭を通して、全体をしっかり整えて完了です。
ズボンの更衣介助
①手すりに掴まり、立っていただきます。介助は麻痺側に立ち、患側の膝を支えながら立っていただきます。ズボンの健側を自分で下ろしていただき、患側を介助します。膝まで下ろして座ります。
②足元まで脱がせ、健側から足を脱がせて、患側を脱がせます。健側の足を上げる時にはバランスを崩しがちなので、手すりを持っているか確認します。患側を脱がせるときは、介助者の太ももに乗せて行うとスムーズにできます。
③新しいズボンを履き、膝まで上げます。
④同じく立位を取り、健側は自身で履いていただき、患側を介助します。
必ず本人が健側を自身で行わなければならないということではありません。その時の体調や気分に合わせて、どこかまで支援者が行うべきかを見極めましょう。
寝たまま行う場合
ベッド柵を外したり、ベッドの高さを調整したり、介助者が介助しやすい環境づくりを行います。
ズボンの更衣介助
①仰臥位の状態で着脱を行います。外せる部分があったら外しておきましょう。
②まずは前面を少しでもお腹より下に下げておきます。
③側臥位にするか、少し片側のお尻を浮かせて太ももの付け根まで下ろします。続けてもう片方のお尻を少し持ち上げて太ももの付け根まで下ろすと、側臥位にしなくとも簡単に脱がせることができます。
※ただし臀部に褥瘡がある方など、必要であれば側臥位にして片方ずつお尻を下ろして脱がせていきましょう。
上半身の更衣介助
[前ボタンの衣服の場合]
①仰臥位の状態で、前ボタンを開けておきます。
②首を持ち上げ、肩甲骨の近くまで衣服を下げます。
③介助者側から向こう側に側臥位になっていただきます。下になる腕を巻き込まないように胸元に出していただきましょう。
④肩から衣服を脱いだら、仰臥位になった時に取りやすいように身体の下に入れ込んでおきます。
⑤側臥位のまま、できればそのまま新しい衣服を腕から通して着せます。仰臥位になった時に着せやすいようにしっかりと衣服を下に引っ張っておきましょう。
※ただし、向こう側の側臥位では介助者からの距離が遠くなるので、腰を痛めそうであれば、一度で済ませずに、一旦脱がせてから改めて新しい衣服を着させましょう。
⑥反対方向(介助者向き)に側臥位にし、古い衣服を脱がせて、新しい衣服を着させていきます。
⑦腰のあたりをしっかり整えて、シワを伸ばし、仰臥位になっていただき完了です。
[かぶりタイプの場合]
①側臥位の状態で肩を脱がせて、肘、手と服を脱がせていきます。
②仰臥位になり、頭を抜きます。
③少し肩を持ち上げ、浮かせて、肩、肘、手と服を脱がせます。
※もちろん可動域や、身体状況は個人差があるので、利用者さんがやりすい、負担の少ないやり方でケースバイケースで行ってください。
おむつ交換等を伴う場合は下記を参考にしてください。
≫【おむつ交換・陰部清拭・陰部洗浄】訪問介護での手順を現役ヘルパーがわかりやすやすく解説
靴下の更衣介助
なるべく窮屈でない、柔らかい素材のものを選びましょう。
①爪を引っかけないよう、靴下を両手で巻き上げてつま先をまず合わせます。
②摩擦がないように、靴下の生地の裏側を指で滑らせながら引き上げていきます。
高齢者の肌はデリケートですからね
座位で行う場合は、麻痺側の足を介助者の膝の上に乗せて行うと上手くできます。
共通の確認事項・後片付け等
①皮膚の状態はどうだったでしょうか。傷やあざ、赤みなどはなかったか、褥瘡、褥瘡の予兆などはなかったか、確認をして異変があれば報告・連絡が必要です。
②利用者の気分を確認します。
③外したベッド柵があるなら元に戻し、ベッドの高さを調整したなら元の高さに戻しましょう。
④脱いだ衣類は洗濯場など、決められた場所に持っていきます。
⑤軟膏の塗布など、必要があれば更衣介助の間に行ってください。
※褥瘡の処置は医療行為にあたるため、ヘルパーが行うことはできません。
まとめ
更衣介助はただ着替えるだけでなく、皮膚の状態を確認し、問題がないかチェックする重要な役割も担います。
また関節可動域を動かす意味でも重要です。
自分でできることがある利用者さんには、是非できることを自分で行う機会を与えてください。
ただし、普段の生活の中で、できないことが多くてストレスを抱えておられる利用者さんに、無理強いしないように気をつけなければなりません。バランスを考えながら支援を行っていきましょう。
更衣介助は清潔保持だけが目的ではありません。
一日の始まりを感じ、一日が暮れていくのを感じる、生活リズムのスイッチとなります。
同じ部屋の、同じベッドの上で過ごすのだとしても、着替えることで、時間や日々の移り変わりを感じることができるのではないでしょうか。
そして少ない時間でも介助者さんとのやり取りは貴重なコミュニケーションです