【食事介助の技術】訪問介護での手順を現役のホームヘルパーが解説!

身体介護

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食事には人が元気に生きていくためのたくさんの効果が含まれています。

介護を通じて、ただ召し上がっていただくだけではなく、利用者さんを観察し、利用者さんの元気の素を支えていきましょう。時には意思疎通が難しく、食事を拒絶される方もおられますが、その理由を探っていくこともヘルパーの役割の一つです。

食べる気力のない利用者さんに、食べていただかなければならない役割を与えられたヘルパーは不安になるかもしれません。しかし自分を責めず、周囲の人の助言や協力を得ましょう。

私は大丈夫でしょうか?

利用者さんが食べる気満々であれば、ここをすっ飛ばして下へ行ってください。拒否する利用者さんに悩んでいる場合は、どんな理由が潜んでいるのか想像してみましょう。

・そもそも体調が悪い。身体的な異変がある。

・気分が落ち込んでいて、食事が喉を通らない。

・食事の内容に不満がある。

・ヘルパーの応接に不満がある。

・認知症の症状により、食事の時間であることを認識できていない。

ヘルパーの応接に不満がある、と考えられる場合は速やかにヘルパーを入れ替える必要がありますが、そのことでヘルパー自身が自分を責めたり、責められることのないようにしましょう。原因特定も重要ですが、人間の相性がある、と気持ちを切り替えることも時に大切です。

いずれの理由にせよ、焦って食事を強要すると、かえって利用者さんの拒絶感をあおることになります。

無理な食事介助は誤嚥の危険性を高めます。

誤嚥(ごえん)とは、本来、咽頭から食道へ通過するべき飲食物が、誤って気管や肺に入ることを言います。咳き込んだり、呼吸困難を起こしたりすることがあり、誤嚥性肺炎などの合併症を引き起こす危険があり、重症化すると死亡するリスクがあります。

食事介助は命に関わる真剣勝負だよ!

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ヘルパーの役割と心理

召し上がっていただくことが職務だからと言って、悲観的に取り組むことはまったくもって非効率。

人類にとって食すことは、基本的に幸福行為であり、最低限の、生命を支える最終手段の一つなわけですから、そのお手伝いをすることは、ヘルパーのにとって何かとても重要な役得なのではないでしょうか。

責任』はもちろん重大ですが、そんなものを軽く超えてしまえるぐらいに真剣に利用者をまずじっと、じっと見てみましょう。

ん・・・

準備

  • 利用者情報の事前確認(アレルギー、食事制限等の確認)※
  • トイレは済ませているか(自分も大丈夫か)
  • 手洗い、アルコール消毒等、エプロンを装着
  • 利用者の体調確認
  • 食事の場所の清潔感を確認
  • 食事の内容と食介用具の確認

※利用者さんの中には特定の食品に対してアレルギーをお持ちの方もおられます。また食事に制限がある場合も。例えば病気の性質上、繊維質のものを採りすぎてはいけない方、あるいは服薬との関係上、グループフルーツを食べることが禁忌な方も。まずはそういった利用者さん個々の基本情報を頭に入れておきましょう。

利用者さんの好みや小さいこだわりなんかも、覚えておくと信頼度アップですよ

食事を温めるか、冷ますか、細かく刻んだりする必要があるのかどうか、好き嫌いはどうか、訪問を重ねるごとに利用者さんの好みを覚えておくことで、利用者さんのストレスを軽減し、信頼度アップにつながります。

もし事前確認を怠り、ヘルパーが一度でも自分勝手な判断をして支援を行うと、利用者さんはあなたに対して不信感を抱いたり、監視したり、疑ったりと、お互いに息苦しい関係となってしまいかねません。

誠実であることが一番の近道なり

また、なるべく訪問の度に同じ質問を繰り返さないよう、一度教わった内容はサービス終了後でも良いのでメモしておき、次回訪問時に事前確認します。

なかなか自分とは価値観の違う『他人の常識』は理解できないもの。誰もがつい自分の常識を押し付けてしまいがちです。

心の準備が必要です。利用者さんはあなたの個性を求めていません。けれど、あなたを求めています。正解探しの旅に出ましょう♪

食事の基本姿勢

座位が保てている場合

  • 深く腰掛けている
  • 背もたれがあり、安定している
  • 頭は前かがみで少しあごはひいている(あごが上がっていると飲み込みにくくなる)
  • テーブルの高さは肘が90度に曲がるくらい
  • 座面の高さは膝が90度に曲がるぐらい
  • 足が床にぴったり着いている

座位を維持できない場合、嚥下障害がある、体を起こすと血圧低下がある、そのような方はベッド上でギャッチアップ30度で召し上がっていただく場合があります。

さらに寝たきり状態にある方は、頭部を15度~30度キャッジアップし、少し横向きになり、膝を軽く曲げていただきます。背中部分にタオルや枕を置き、体位を安定させましょう。

ギャッチアップ30度は、食事を喉の奥に運びやすく、嚥下しやすい角度と言われています。もちろん30度以上に上げても大丈夫な方は、行ける方は80度ぐらいまで、上げた方が視界もよく、食事が見えるので食欲が増し、より自然な状態での食事ができます。

食事の配膳と促し

「いただきます」までのスムーズな流れをつくることが重要です。

毎回違う流れになると利用者さんはリズムが整いません。声かけのタイミング一つ、食べるまでの習慣づくりを行いましょう。

食事を運び、置くときの振る舞いが雑だったとしたら、それだけで利用者さんの不安を煽るかもしれません。

求められることが多いと思わずに、楽しんで色々な役割を演じてみましょう。

時に、あなたはプロのホテルマンのように優雅な動きをし、時にレストランの洗練されたホールスタッフにような美しい動きで、食事を利用者さんのもとにセッティングします。

お食事がやってまいりました

・・・・・・

どんまいですよ。

料理は高級レストランの前菜なんかではなく配食弁当かもしれません。

どうしても食べたくないものを無理強いすることはできないですが、もしかしたら、ちょっとした工夫で食べる気になるかもしれません。

召し上がられない時の声かけ例をあげてみます。

  • 「何か、これとは別のものだったら食べられそうでしたか?」
  • 「では少しだけ、食べられるものだけ食べてみませんか」
  • 「ここのごはん、○○らしいですよ。これだけでもどうですか?」
  • 「体力つけてくださいよ。しっかり栄養とって、元気になったらまた○○しないといけないですからね」

色々と利用者の立場に立って、気持ちを察すると見えてくるものがあるかもしれません。何かしら別のストレスが原因で食欲が減退しているのかもしれません、あるいは身体の機能的な問題、胃腸や口腔内の問題かもしれません。

工夫できることはないのか、考えてみましょう。

  • 時間をズラしてみる。(タイミングが合っていないせいかも)
  • 量を減らしてみる。(食べられる自信のある量をお出しする)
  • 種類を変えてみる。(何かしら食べたくない理由が隠れている可能性も)
  • 認知症の方であれば、下唇に一口当ててみて、食べ物と認識してもらう。
  • 入れ歯が合っていない。(歯科医に相談!しかないですね)

自分で意思表示ができ、理由を説明できるのならば良いのですが、上手く表現できずに『食べない』という手段をとる利用者さんが少なからずいます。

様々な選択肢を想像し、答えを導きだしましょう。利用者さんが意欲的な姿を見せてくれると、こちらもつい笑みを浮かべてしまいます。

どうしても食べられない場合、べつの方法で栄養を摂取することも考えられます。

自分で抱え込んでしまわずに、他の方に応援を頼んでみましょう。他のヘルパーさん、サービス提供責任者、管理者、ケアマネージャー、看護師、医師、ネットや自治体の相談窓口などなど、代替選手はいくらでもいるのです。

ヘルパーが変わることで上手くいくこともありますし、能力の問題ではなく相性もあると思います。どうしても周囲の理解が得られず、「ともかくあなたが頑張ってください」と言われたならば、開き直って『自分にしかできないチャンス♪』と思考を転換し、自信を持って取り組むことをおすすめします!

逆に、困った職員がいたら、周りが助けてあげてください

食べる介助

長かったですね…、正直。ここに来るまで。でも何事も準備が九割です。

利用者の前ではなく、横側についてサポートします。

まずお茶やお味噌汁など、喉を潤すものを一口。渇いた喉に食べ物をひっかからせないようにします。むせるのを防ぐとともに、「今から行きますよー」と、胃にメッセージを送ります。

食べる順番

食べやすいもの、咀嚼しやすいものから順に召し上がっていただきます。いわゆる三角食べが理想です。主菜、副菜、水分とまんべんなく召し上がっていただきましょう。

やや小さめのスプーンを使います。口のやや下から持っていくと、あごが引け、誤嚥しにくくなります。

一口量については、ティースプーン一杯くらいが目安です。多すぎてはむせたり窒息したりする危険がありますが、逆に少なぎると嚥下反射が起きにくくなり、これもまた嚥下反射の機能が弱まっている高齢者や障がい者の方にとってはリスクとなります。

必要に応じておかずをきざんだり、つぶしたりし、食べやすい大きさにします。

利用者さんの咀嚼力をじっくり観察しましょう。共感力を高めて、ごくんと飲み込むのを確認したら、次の食べ物を口に運びます。

タイミングを見計らって水分補給しましょう。

がんばって生きましょうよ!とか勝手に思いながら…

メニューの説明

「見たらわかるわ!」という方もいらっしゃいますが、認知症の方や、知的障がい、視覚障がいのある方、必要な方には、食べるものを認識していただくための声かけを行います。

食事中のコミュニケーション

そもそも利用者さんがしっかり覚醒されていなければ危険です。お声がけを行い、始まりから終わりまで誘導しなければなりません。

お声がけのタイミングは見極めましょう。食べ物を咀嚼している際に、話しかけられると、答えるために利用者さんが慌てて飲み込もうとし、誤嚥につながる危険性があります。

利用者さんによっては、リラックスして食事をするために、話をしたい方もいらっしゃると思います。例えば、料理の作り方や食材の情報、食べ物にまつわる思い出話など。また天気の話や近況報告、趣味の話題などの軽い会話を。

利用者さんの調子が良さそうであれば、傾聴し、お話していただきます。しかし同様の話題を思いついたからと言って、安易に会話を広げたりせず、食事の進行を妨げないよう最低限に抑えます。

食事量の確認

利用者さんの健康状態や栄養状態を把握するために、食事量を確認し、記録しておきましょう。

どんなものを残し、どんなものが咀嚼しづらかったかなど、記録しておくことで、次回訪問のヘルパーさんへの参考にもなります。

ご家族やサ責、ケアマネージャーなどからヒアリングを受けた場合に、いつでも報告できるイメージを持ちましょう。

食事が終わったら

さて、たくさん召し上がっていただけたでしょうか? あなたの食事介助が素晴らしすぎて「食べすぎた」、「お腹痛い」なんてことになってはいないでしょうか?

気分の確認をしてください。

ここまで来たら「もし監視カメラなんてあったら窮屈でやってらんないワ!」っていうより、おでこにカメラ付けてリアルタイムで誰かに観てて欲しいぐらいですよね。

利用者さんのお口の周りを拭き、エプロンを外します。

食後の服薬があれば服薬介助をし、安楽な姿勢を確保します。

食べこぼしなどの処理、テーブル掃除と台所の掃除をしていきます。

まだまだ、観ていて欲しいような輝く仕事っぷりは、次に移っていきますよ♪

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